アシェンダの伝説

油彩 キャンバス ミクストミディア 540mm × 610mm

 HACIENDA=アシェンダというのは荘園のこと。
スペイン統治時代に、占領者が土地の農民を使い大荘園をなしていた。
いまアシェンダというのは、その荘園主の住居跡を指すことが多い。
ほとんどは朽ち果てたただの瓦礫であるが、リフォームしてホテルや学校に再利用しているのもある。

 私が住んでいた銀山の街では、アシェンダといえば昔の製銀場の跡を指す。
約500年前にこの土地で銀が発見されて以来、時代ごとにいくつもの製銀場がつくられた。
山の中にはあちこちにレンガの瓦礫が眠っている。そこにはたいがい伝説があり、瓦礫のそばに住むおじさんは、異国人の私に不思議な話しをしてくれる。
その多くはこういうもの。
「自分のおばあさんのそのまたおばあさんの時代、この辺りの人々はみな、この製銀場で働いて裕福な暮らしをしていた。しかし、小人が地中から出てきて悪戯をし、水道橋を壊してしまった。それでこのアシェンダでは水が出なくなり働けなくなったので人々は去っていった」

 水がなくなり工場の機能がストップするのは理解できるが、それが小人のせいであることが多い。
小人はマヤ遺跡の壁画にも登場するので、こちらの人には昔からなじみのある精霊なのかもしれない。

 その伝説を聞いてからもう一度、アシェンダに行ってみる。
鳥の声しか聞こえない森の中。
レンガの瓦礫は木々の合間にひっそりとそこにある。
ほとんど原型をとどめない建造物を、その元の姿を創造して見てみる。
なるほど、この背の高いアーチ状のものは水道橋なのだろう。
一瞬、その影で何かが動く。
とっさに私は身構える。「小人か!」ついそう感じてしまうのは、たぶんおじさんの話し方が上手だったからだろう。
そしてそれ以上、足を踏み入れるのがためらわれた。
精霊たちを驚かしてはいけないような気になってしまったのだ。

 このように多くのアシェンダでは、おじさんのような話し手のおかげで、精霊たちが今でも静かにそこで暮らしている。